会社を設立する方には、主に二通りの方がいます。一つは、現在個人事業を営んでいて、法人化するために会社を設立する方です。もう一つは、現在サラリーマンや公務員などの被用者として雇われている方が、独立して会社を設立して新たに事業を始める方です。

個人事業からの法人化

許認可について

既に個人事業を営んでおり、その事業を法人化する場合の注意点です。まず、許認可が必要な事業はすべて取り直しになります。例えば、建設業の許可や風俗営業法の許可宅地建物法の許可などは、個人から法人へ変更する際すべて取り直しになります。たとえ社長が一人で事業を行っており、実際にはその事業を行う人間が変わらないとしても新たに新規の申請が必要になります。

それに対して、合同会社から株式会社への変更など法人格が変わったり社名が変更になる場合には、大半の許認可については変更の届出等で対応します。

税金

個人事業では、事業の売上から経費を引いたものがすべて個人の所得になっていたと思いますが、会社を設立して取締役や社員(合同会社の場合)になると役員報酬から勤め人のように所得税がかけられ、会社の最終利益には法人税がかけられます。また、会社が最終的に残った利益は利益剰余金として会社に内部留保されます。この感覚を常に頭に入れておかないと、会社の利益=自分の所得となってしまい経営がおかしくなります。

できれば、ある程度会社に体力がつくまでは内部留保を積み上げることをお勧めします。会社に利益が上がり税金で持ってかれるのがもったいないと言って、無理に経費を使っている社長がいますが、すでに体力をつけているのであればそれでよいかと思いますが、そうでなければ会社の内部留保を考えましょう。

今年のようなコロナ禍は誰もが予想していなかった事態です。このような時に内部留保がある程度ある会社は、その内部留保の額によりしばらくの期間しのげることができています。

また、利益を経費に回すにも良い経費と悪い経費があります。極端に言えば、社長の飲食代や高級外車を買って経費にしても、社長の満足は得ても会社自体はなんの成長も得られません。そこは、ぐっと我慢をして、例えば広告宣伝費に投資して来期以降の売上を増やすように試みるか、人材の採用経費に充て優秀な人材を確保するなどの明日につながる経費に充当していくことを考えましょう。

脱サラして会社設立

あなたが会社や公務員を中途退職したり定年退職したりして、会社設立しようと考えなら、今までとは全く違う世界が待っています。

経営者のマインド

経営者のマインドは、サラリーマンや公務員の考え方と全く変わっていきますし、また変わらない方は失敗します。

勉強

あなたが、以前どんな業界でどのような仕事に携わて来たかにかかわらず、かなりの勉強が必要になります。その覚悟の上での独立をお勧めします。例えば、脱サラをしてラーメン店を始めようとします。ラーメンの作り方については、多少サラリーマン時代から勉強をしていたのでしょうが(そうでなければ、いきなり自分でサラリーマンを辞めてラーメン店を開こうとはならないでしょう。)店の立地、内装、メニューの作成、保健所への届出、広告・宣伝、経理など今までやったことがない仕事が山ほどあります。もちろん味の探求も毎日のように必要になってきます。結局そこまでできなければ、フランチャイズのラーメン店になればよいのですが、それでは満足しない方も多いと思われます。

勉強するには、本を読んだりセミナーを受講したりする必要がありますが、サラリーマン時代より読書量は相当増やしていかなければ追いつきません。たとえ、一時的に成功したとしても、市場は常に動いています。あなたの会社も常にイノベーションが必要です。

お金の流れ

サラリーマンのときのマインドと起業家のマインドの一番の違いはお金の流れです。サラリーマン時代は、あなたが仕事をした分会社が必ず給料をくれました。そして、交通費などの経費は会社が出してくれました。たとえ、失敗したからといって損失をあなたの給与から引かれることはなかったでしょう。

ところが、独立するとお金に関する考え方が全く変わってきます。最初はZEROからスタートするので、最初にお金が出ていくのです。曽根出ていったお金は、確実に増えて買ってくるとは限りません。時には、投資したお金が一円にもならないときもあります。

たとえば、あなたが売り上げを増やすために広告を出すことにするとします。新聞の折り込みチラシや、電柱看板やインターネット広告などです。(ちなみにこれらの広告についても事業主は勉強が必要です。)

もし、10万円の広告費をかけて11万円になるなら広告を出そうと考えている人がいたら、その方のマインドはサラリーマンマインドです。もしも確実にもうかるなら、ライバルは既にやっています。10万円投資いて、リターン0かもしれませんし、20万円になって帰ってくるかもしれません。

そして、失敗も多くします。ところが、失敗は必ず自分の栄養となります。いろいろなテストを重ねて成功確率を上げていきます。そして、失敗の元を断つことが徐々にできるようになります。

投資

投資といっても、投機的なギャンブルのような話ではありません。先ほどの例のように、広告にお金をかけたり良い人材を集めるために最初にお金をかけます。そして、成功する人はしばらくしてそのお金が数倍になって帰ってきます。

でもここで安心はできません。苦労してやっと帰ってきたお金を、事業を大きくするためと称して、また投資します。今度は、前回より掛け金が多くなっていますので、成功したときのリターンも大きくなります。

ただ、くれぐれも一発勝負だけはやめましょう。なぜなら失敗はつきものだからです。ユニクロの柳井会長の有名な言葉に「一勝九敗」という言葉があります。事業というのは、10種類の仕掛けやチャレンジをしてみて1つ当たればそれでよしと言っています。

決断力が必要になってくる

サラリーマン時代と、企業独立した人はそれ以外にも数えきれない変化があります。いやな上司のご機嫌を取らなくてすんだり、自分で何でも好きなことを選んだりすることもできます。逆に考えれば、経営者は常に決断に迫られます。

これは、AとBどちらを選ぼうか、いっそ両方選んでみようか、お金はいくらかけようか、色はどんな色にしようかなどなど経営者の一番の仕事は決断することといっても過言ではありせん。その決断ができない人は、いつまでもそのポジションで立ち止まって体力(資金)が尽きるのをただ眺めていくだけになってしまいます。

もちろん、まだまだサラリーマン時代とは違うことが山ほどありますが、これらのことを概ね理解したうえで独立知ることをお勧めいたします。